京都金彩友禅作家、堀 省平作品 辻が花模様振袖
金彩友禅を得意とされる京都伝統工芸士 堀 省平さんの辻が花模様に金彩の振袖。
金箔工芸の第一人者として人気のある堀省平は1948年(昭和23年)に、金彩師であった堀幸之助(ほし さちのすけ)の長男として生まれます。
生まれた当初から金彩の技術を学べる環境にあった堀省平は、1962年(昭和37年)に金彩の道に入っていきます。
1985年(昭和60年)以降から金彩工芸展で数々の作品が入賞し、徐々に評価が高まりました。
1992年(平成3年)の金彩工芸展では、最高賞に当たるの近畿通産局長賞を受賞するまでに至りました。
その後も魅力的な金彩友禅を制作し続けた堀省平は、1997年(平成8年)に通商産業大臣認定資格の伝統工芸士に認定されました。
認定後、外務省からの依頼でモナコ公国700年祭に参加し、自身の作品発表・寄贈をしました。
2001年(平成12年)には和装美の素材を海外の文化に求めた『リ・ロイヤル』を発表しました。
また、同年に発行された美術家名鑑に特殊工芸作家として掲載されました。
堀省平は金彩の魔術師とも呼ばれている伝統工芸士で、彼が制作する金彩友禅の着物や帯は見る角度によってその表情を変えて反射する箔加工が特徴的で、著名人をはじめ多くの人から愛されています。
金彩友禅の技法と特徴について
金彩友禅には独自の技法がいくつか存在していて、それらの技法を組み合わせることによって様々な表情を生み出しています。
堀省平の作品も現代の感性に、色彩と模様を作品上で表現したことで高い評価を得てきました。
ここからは、金彩友禅で用いられる技法とそれらの特徴についていくつか紹介します。
押箔(おしはく)
金彩技法の基本的な技術の一つです。
糊(接着剤)を箔の置く部分に筆で均一に塗り、紙や布なので余分な糊を取り除きます。
シワができないように素早く箔を張り付けて自然乾燥します。
箔の色の変化を線・面・点の部分で表現するときに、箔の風合いを美しくするための技法として用いられています。
泥金描(でいきんがき)
細かな純金粉などを樹脂でよく溶いて筆で生地上に模様を描く技法です。
筆以外にも、たたき印毛や金網などを使うことによって多種多様な模様を表現することが可能です。
しかし、直接生地の上で筆を動かすので熟練した技術が必要とされています。
盛り上げ箔
金彩模様を立体的に表現する技法です。
立体感を線・面・点で表現するときは、粘度の高い糊を型紙や筆などで生地の上に塗ってすぐに乾かす。
乾燥後に溶剤などが入った霧吹きで糊の粘着力を戻して、そこに箔・砂子をつけることで刺繍のような立体感のある金彩を表現しています。
堀省平の作風とは
若いころから金彩の術を学んだ堀省平の着物や帯の作品は、金彩工芸展では高い評価を受け、伝統工芸士としても認定されているほどその技術は確かなものがあります。
堀省平の作品は、金彩工芸士ならではの煌びやかな金箔を何枚も重ね、金箔一つひとつに繊細な柄が浮かび上がっているのが特徴です。
また、金彩技法を用いての絶妙な箔使いで、プリズムの魅力を最大限に生かした作品は、堀省平が持つ独特な技法でもあります。
金箔や銀箔で柄を表現する金彩友禅ですが、堀省平の作品は良い意味でその期待を裏切り、あまりギラギラとした印象を与えずに、優美で気品な作風に仕上げるように金彩技法を用います。
金彩技法を用いながらも優美な作風に仕上げるのは、本人が着物を作るにあたって決めている『着てこそ美しいキモノ』というテーマを貫いているためでしょう。
現代の人にも着てもらえるよう、和装美の追求し日々創作活動を続けています。